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コトバ綴ジ

Date : 2012年01月

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』


elic2.jpg
昨年の秋に、手書き文字に惹かれてジャケ買いした本。
Visual Writing、という書き方を用いているということだったので、原書と日本語、どんなふうにちがうかも気になったので、両方買ってみました。

なぜ「手」なのか、も、手に文字が書かれているのも、内容を読めばすぐわかります。
この手書き文字も。
いろんな知識を並べ立て背伸びするふうで、「なぜ?」と重いものをかかえたままギリギリのところにいる主人公の少年。
そしてドイツ語という共通の母国語があるにもかかわらず、移住したNYで互いに異国語の英語でしか伝えあわなかった少年の祖父母。

このぎこちなげに整えようとして書かれた文字はぴったり。

そしてVisual writing。
使われているたくさんの写真は、文章で書かれた内容に添えられたものではなくて、それそのものが本文の一部で、文章ではおぎなえないものということが、読みすすむほどわかる。
その効果で、ある部分では、いま、自分が手にしているこの本が、まるで物語の一部のような気がしてくる。
また、文章で読むときにも映像をそれなりにイメージして読んではいるけれど、画像でしめされたものは、頭の中のちがうところに保管されているようで、のちにある部分を読んだときに、わっと先の画像が出てくる。そして、ともに、音まで。
ラストはその表し方以外では、ありえません。

ところで、原書だと、手に持った時に、表紙の左手が自分の左手に、そして裏表紙の右手が自分の右手にきて、読み手と物語の距離をなくしている気がするのだけれど、それもVisual Writingのひとつなのか、私の妄想なのか。残念ながら日本語版は、本の開き方がちがうのでそうならないのです・・・。

文章のレイアウト、スペースの取り方や改行の仕方などが通常と変わっているページもあって、それは「異国語」で語るのをあらわしている、という点ではすごく自然。レイアウトの問題でなく、異国語で語っている感を味わうなら、原書かも。
それにしても、ほんとうのことを伝えるのに、よどみなく話せることはたいしたことではない。



手帳の余白が少なくなり、ことばをぎゅうぎゅうに書いていくところ。字間も行間もせまくなり、そしてどんどん文字は重ねられ、何を書いているのかはわからなくなる。ことばで埋め尽くされて闇になる。

これがこんなページになります。

elic3.jpg

これが「2つのビル」に見える、のも私の妄想かもしれませんが、これが日本語版だとだいぶイメージがちがいます。

elic4.jpg

ディセンダーとアセンダーのあるアルファベットが重なっていくのと、日本語の文字が重なっていくのでは、できてくる絵がちがいます・・・。都会の闇と、森の闇、のようにも。


そしてのちにその闇のなかにやがて星が見える。




突然の暴力的なできごとによって、大事な人をうばわれた人たちの物語です。
その「できごと」の背景に、たとえば国と国の、宗教と宗教の、なにがあろうと、その人にとって「だいじな人がいなくなった」ということにはかわりがなく。

ずっと持っている「鍵」。でもそれをさしこんで開けられるドアが、「鍵穴」がどこにあるかはわからない。

物語の最後、急速にすべてのことがつながっていくときには、それぞれの鍵にぴったりの鍵穴が次々に見つかって、「ガチャン」とあける音まできこえているよう。

そして「からっぽ」だったところを埋めることができるのですが、結局実際に「埋める」こと自体は、単なる儀式。

返事のかえってくる当てのない、また読まれることもない手紙を書くこと。たぶんわからないと奥底で思いながらも探し続けること。
そんなことが象徴する、なんの意味があるのかもわからないことをしながら、でも、日々そうやってすごすこと自体が、実はすこしずつ「からっぽ」を埋めている。
そして、「ありえないほど近い」ところにあるものは、遠くにいってみないと見えません。



主人公の少年が「発明」するもの。
紙のうえにとどまらないことば。
妄想好きな人にはグッとくる場面の多い本でもありました。


もうすぐ映画も公開されますね。
監督は『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー。
この方、『愛をよむひと』(原作『朗読者』)、『めぐりあう時間たち』と、本の好みは私とあうようで・・・。
どんなふうに語られているのか、楽しみです。




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プロフィール

sayaka

Author:sayaka
星の
かわりに
夜ごと、ことばに灯がともる
(ウンベルト・サバ 須賀敦子訳)

ことば+アルファベット+妄想。

カリグラフィーをしています。

町の写字室管理人

@scriptorium303

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