けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗らしやや、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹にじや月あかりからもらつてきたのです。
ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。
大正十二年十二月二十日 宮沢賢治
先日、念願かなって原マスミさんのライブに行くことができました。それも熊本で。
なんというか、ものすごくなかから幸せになった時間でした。ずっと見てみたかったから、というのでなく、たぶんまったく知らずに初めてきいてもおんなじ気持ちになったにちがいありません。
上の文章は、宮澤賢治の『注文の多い料理店』の序文。
ライブ、曲のなかで朗読されたものです。
「すきとおった、ほんとうのたべもの」
そんなライブでした。
高校のころ、『哀しい予感』の表紙が好きでたまらなく、でもネットなどなかったころ、名前しかわからず。
それからずっと後になって、目黒の美術館で展示があって、期間中たまたま東京に2回行くことができて、2回も見ることができて、そしてそれからまたしばらくたってライブまできくことができて。
よい人生です。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
そして、これも最近。
XTCのファンの方々が「XTC三昧」というイベントを横浜で続けてらして、今年のそのイベントに、日本のファンのために、なんとAndyが曲をつくってくれました。
さらに、ご尽力のおかげで公開まで!
「DOMO ARIGATO GOAIMASU」の繰り返しなんだけど、きゃー、XTC。
https://soundcloud.com/monacchi/domo-arigato-gozaimasu
Andyにもご尽力くださった方々にも「どもありがとございます」!。
幸せ。
そして今晩はBSでBECKのライブも。
音楽的幸せ週間が続いています。
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さむくなりました。
Ewanのワークショップ、福岡の部は終了。
ほんとに楽しくて深くて。今からのところがうらやましいです。
活字も含めたアルファベットの歴史。
最新の研究もふまえた、たっぷりの情報をいきいきと伝えてもらいました。
Ewanの知識の泉からの水はほんとうにおいしくてしみわたります~。
WSのあとに、家に帰って、文字の歴史の本をながめると、
今まで読んでもインプットされなかったことも、不思議と頭に。
今晩、NHKのBSプレミアム「世界遺産 時を刻む」でフェニキア人のことを取り上げるそうです。
アルファベットの遺跡もちらりと出てきそうです。
あ、下のブログのサンヴィートのところで書いた、碑文の前で飲めや歌えや話、
Ewanのスライドショーで、「え!?」な、リアルな話がきけましたよ。
マンテーニャとのつながりもたっぷりと。
youtubeは最近よく聞いている、ベニー・シングス。
寒くなって、窓を綴じる季節になると聴くものもかわります。
ビデオ、ヘンだけどかわいいんですよね。
お時間あれば最後まで。
お!?→え!?→カール・ロアース!?→そうきたか~!→ふふ。といった感じです。
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Zapf展 余談
いまでこそZapf氏がすばらしいカリグラファー&フォントデザイナーであると知っていて、展示のおすすめなどしていますが、カリグラフィーを始めた頃にはお名前もまったく知りませんでした。
実はツァップさんを知ったのは、偶然です。
まだ関西にいたころ、もう10年以上前ですが、京都にあそびにいって待ち合わせまでの少しの時間をつぶすのに本屋に入りました。おもしろそうな本がたくさん並んでいて興奮、したのですが、時間もなく、さらに今から遊ぶのに重い本は買えない・・・。
ってことでパッと見て、さっと買ったのが、上の写真の『30センチメートルの友情 ヘルマン ツァップ氏への30人の手紙』という本でした。
ヘルマン・ツァップなる人のクリスマスカードへの返答として、日本人のデザイナー30人がA4版に同じ文章をデザインし、それを本にまとめたもの、でした。
テキストはツァップ氏のカードにあった岡倉天心の『茶の本』の一説。
「わたしたちが人生を考えるとき、時代を共にする芸術からの要求を、無視することはできません。現代の芸術は、わたしたちに属していますし、みずからの反映でもあります。(以下略)
シンプルな見た目と、その取り上げられていた一説、そしてなんといっても『30センチメートルの友情』というタイトルの響きに惹かれて買ったのでした。
カリグラフィーはかじり始めたころだったので、日本語と欧文の両方でデザインされているところも。
30人の日本人のなかには、Zapf展に特別協力されている高岡さんや、山口信博さん、白井敬尚さんなど、今でこそさすがに疎い私でも名前は知っているデザイナーさんがいらっしゃいますが、そのころはほんとうに誰もわからず。ツァップさんも、ふーん、たくさんの日本人と仲いいねんなあ~、なんて思っただけ(汗)。あとは「ツァップ」という表記と実際発音したときの尺のちがいがなんか気になった、ってところでしょうか・・・。
ま、とにかく、そんな感じ、でした。
その後カリグラフィーをするなか、ツァップさんを知り、カリグラフィーとフォントのつながりを知り、ようやく結びついた、という・・・。
本におさめられた三十者三十様のデザイン。日本語だけのもの、日本語+英文、さらに+独文のもの。
読みやすいもの、読むことを目的としていないもの・・・。
見比べていると、自分の好みもわかって、おもしろいです。
さて、この本を出している朗文堂さんのZapfさんの本についてのページ。
「夫人とともにドイツのダルムシュタットで草花や樹木にかこまれてくらしています。 」
なんて、素敵・・・。
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音と文字とstylus
先日美術館にでかけたときに、“phono/graph"という展示のDMをみつけました。
phono/photoとしての言葉
目が出会う言葉
耳が出会う言葉
phono/graphは、新たな音と文字の関係を考察する展覧会である。
(DM案内文より)
サイトを見てみると、phonographというのは蓄音器のことなのだそう。
以前服を買いに行ったお店で、オットにもぜひ、と系列のお店を教えてもらったのだけれど
その名前が「stylus」(スタイラス)でした。
きいた瞬間、カリグラフィー経由の知識がほとんどの私の頭のなかに浮かんだのは
「鉄筆!?なんでそんな名前!?ものすごい文字マニア!?!?」
だったのだけれど、そんなわけはなかった・・・。
お店の紹介のページにいってみると、
「スタイラスとはレコードプレーヤーの針のことです」
とありました。
綴りは同じ。
元々はレコードの原盤に溝をきざむのに使ったものをstylusと呼んでいて、それがレコード針のことを指すようにもなっていったようです。
なるほど。要するに、先がとがっていて、板などをひっかいたりする道具がstylusと呼ばれてるんですね。
日本語だと文字を書く道具としての役割を重視した訳になっているので「尖筆」「鉄筆」など「筆」とついてしまっていますが。
英語のstylusのもと、ラテン語のstilusを辞書でひいてみると、
1.先端のとがった長い金属、木片、長釘、杭
2.幹、茎
3.鉄筆、尖筆、ペン(蝋版に字を書くためのもの、先端は尖り、頭の方は字を削る(消す)ため、角がなく平たい)
4.ペンで書くこと、作文、習字、書き方、文章、文体
とありました。ふむふむ、とにかくああいう形状のものをそう呼んでいて、そういう形をしている文字を刻むものもそう呼んで、さらに書くこと自体もそう呼ぶようになったのか。
詳しく調べてはいないのでわかりませんが、英語の語源をさがすときにはまずひいてみるOEDのstylusをみると、ひとつめの語義としてでてくるのは「styleの1と同じ」。
styleをひくと、ひとつめに「蝋版などに文字を刻むための片方がとがった金属や骨などでできた道具(一部略して訳してます)」とありました。そのうちにwriting styleの意味をもち、そこから、今のいわゆるスタイル、建築や美術、ファッションも含めいろいろな様式や文体をさすことばになっていったようです。文字を書くことが出発点。レコードの針から、お店の名前をstylusにしたにしても、服のスタイルにつながっているなんて、おもしろい。
とここで話はもどって・・・
音がうまれるstylus。
文字がうまれるstylus。
同じstylusから。
ほわほわわあん(効果音)
なにか妄想がでてきたかも・・・。
音と文字による展示、どんな作品になるのか楽しみです。(といっても大阪まで見に行けませんが・・・)
ところで、タブレットとスタイラスときいて、蝋版(wax tablet)と鉄筆を思い浮かべる人は、かなりアヤシく、今や小さい液晶画面とそれに触れるペン(?)を思いうかべるほうが普通?
でも、こちらのスタイルラスと音楽、というのも妄想が膨らみそうです。
さて、簡単にスタイラスの意味をみるならWikipediaでどうぞ。
最近きいているもの。
立て続けに3枚CDを買って、ここのところ繰り返しきいています。
ひとつはシャルロット・ゲンズブールの「IRM」。
カバーの彼女はあいかわらず素敵です。
前回のアルバム「5:55」は、私の好きなAIRプロデュースでしたが、今度もまた!こちらも大好きなBECKとくんでくれちゃいました。
タイトルや歌詞カードの歌詞はhandwriting(シャルロットの?)。写真とかぶってたりして読ませる気なしといった感じですが、一度書いたことばを線で消していたり、いろんなメモがあったりして、歌をつくっていっていたときのノートそのまま、といった雰囲気がよいです(ほんとにそのノートかどうかはわかりませんが)。
そしてhandwritingの文字。小文字の「p」にはbowl部分がなくて、1ストローク目しか書いてないのが結構見られました。ボウル部分のスペースはあいていて。文脈で単語はわかるし、まるいカタチが2つ続かない、のもおもしろい。
2つめはVampire Weekendの「CONTRA」。年明けからラジオから流れてくる曲が、いいなと思ったら、この名前だった、ということが続いたので、買いました。
恵文社の店長さんのブログで、このCDが取り上げられていて、アルバムタイトル・アーティスト名、歌詞カードの文字すべてがFuturaであること、そして歌詞にもこのフォントがでてくることについて触れられています。
「THE WORD BOMBS BLOWN UP TO 96 POINT FUTURA」って、どういう意味をもつのか、私も気になってしまったので、ちょこっと調べてみました。
長くなるので後半にまとめて書いたので、興味のある方はどうぞ。
みっつめは冨田ラボの「shipahead」。
こちらは、二曲目の佐野元春が歌う「ペドロ」がいちばんのお気に入り。
佐野元春、ってとくに好きでもなかったんだけれど(失礼)、去年から彼のラジオ番組「Motoharu Radio Show」にはまってます。彼の淡々としたでもクールじゃない語り口、そしてなんといっても声が気持ちいい。そして選曲も好きです。「CONTRA」もピックアップに入ってますね。
そしてtwitterを「トゥイッター」と必ず発音するところ・・・。待ってしまいます。
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